介護の精神と社会

介護という人々を支える仕事について精神面や法制度などを交え 解説しています。

スピーチロックとは

      2015/11/07


拘束について見てみると身体的な拘束が大きく話題に上がる事が多いと思います。
しかし、実際の所、身体的な拘束による被害よりも、言葉による拘束の被害の方が多いのです。

 
言葉は身体拘束のように器具を使って相手の行動を制限するわけではなく、ある意味では誰でもやりかねない拘束の一つです。
言葉による拘束は「スピーチロック」と呼ばれ、介護の現場では利用者の自由を制限する行為として、スピーチロック廃止に向けた動きもあります。

 
では、スピーチロックとはそもそもなんなのでしょうか?
また、スピーチロックに該当する言葉にはどんなものがあるのでしょう。

 
スピーチロックを現場で廃止するにはどんなポイントがあるのでしょうか。
スピーチロックについてまとめましたのでチェックしていってください。

 

 
スピーチロックとは
 

 

スピーチロックとは

スピーチロックとは (2)
スピーチロックとは身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
スピーチロックは身体的な拘束をしているわけではないけれども、身体拘束と同等の効果があるとして利用者の自由を奪う拘束行為として知られています。
スピーチロックを受けた利用者は、介護者の声掛けによって精神的な自由を奪われ、自由な行動を妨げるものなのです。

 
身体拘束は認知症の高齢者などに多い特徴を持っていますが、スピーチロックは比較的認知症などない、思考がクリアな人がされる場面が多いです。

 

 

 

 

スピーチロックの具体例

スピーチロックの具体例
スピーチロックは利用者の行動を妨げるような声掛けがこれに当たります。

 
具体的な例としては次のような言葉があげられます。

  • 動いたらダメ
  • 早く食事して
  • 立ち上がらないで
  • どうしてそんなことをするの

 
利用者の行動に対して、叱るような言動もスピーチロックの対象になります。

 
スピーチロックのような利用者の行動を制限するような声掛けは、BPSDと呼ばれる行動障害の原因となる他、精神的な負担となり不穏な状態を引き起こす原因となります。

 

 

 

 

人によってスピーチロックの基準がことなる

人によってスピーチロックの基準がことなる
スピーチロックについては、現在どのような言葉が拘束として該当するか、はっきりとした判断基準はありません。

 
しかし、一般的に人として相手の尊厳を傷つける言葉や人権侵害に当たるような言葉はスピーチロックに該当するとの見解があります。
また、人によっては行動を制限されるような言葉であっても、他の人にとっては行動を制限されるような言葉でない場合もあります。

 
主に声掛けの受け手となる利用者の今までの生活や慣習や受け止め方によってスピーチロックが否かが判断されると言っても良いでしょう。

 
また、今まで生活してきた中で受けた心の傷や人間関係の中から、ふとした言葉で行動的な自由を奪われてしまうような利用者が居ます。
声掛けをした後の利用者の表情や行動は介護者として変化を見落とす事がないよう、注意する必要があるでしょう。

 

 

 

 

少しの言葉の違いでスピーチロックが廃止できる事がある

少しの言葉の違いでスピーチロックが廃止できる事がある
スピーチロックの特徴としては利用者の行動を制限する、あるいは強制的に行動させるような命令的な口調であるケースが多いです。
言葉じりには上から目線のような意味のこもった言葉が多いでしょう。

 
しかし、言葉を少し変えるだけで劇的にスピーチロックを廃止する事が出来ます。

 
スピーチロックが命令的な言葉であったり、高圧的な言葉であると言った特徴を持っているのに対し、利用者の行動を制限しないような言葉がけには「利用者の同意」を得るような言葉が多くあります。

 
「ちょっと待ってよ!」という言葉であれば「少し待っていただけますか?」という言葉であったり、「立ち上がらないで!」であれば「後で一緒に散歩に付き合ってくれませんか?今は足を休めて欲しいのですが」という言葉であったり、「待ってほしい」「立たないでほしい」という言葉の裏にある思いは同じであっても、利用者の行動を介護者が制限するには至っていないのではないでしょうか?

 
つまり、利用者を言葉で縛っていたのは「言葉が悪かった」だけであり、「利用者を思った言葉」を使う事で利用者の自由な選択のもと同意出来るような状況を作る事でスピーチロックを廃止する事が出来るのです。

 

 

 

 

介護現場のスピーチロックは介護の負担を大きくする

介護のスピーチロック 利用者も介護職も拘束される介護
介護の現場では身体拘束のみならず、言葉による拘束も現在では問題視されるようになってきました。

 
人材・財政不足の介護の現場ではよく「ちょっと待って」という言葉を利用者に、利用者の方にいう場面をよく目にします。

 
財政が不足し、人材が不足している介護の現場は忙しいという事で世間では認識されいますが、忙しさのあまりスピーチロックに頼った介護を続ける事は自他ともに疲弊しきるような介護となってしまいます。

スピーチロックとは先ほども申し上げた通り身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
スピーチロックにはスピーチロックを受けた利用者も、スピーチロックをした拘束者である介護職も拘束をしてしまいます。
スピーチロックには「直接的な拘束」と「間接的な拘束」があるのです。

 
直接的な拘束とは言葉そのものによって起こされる拘束です。
これは拘束者である介護者が利用者に対してスピーチロックを行う事によって起こされる拘束です。

 
直接的な拘束に対し、「間接的な拘束」があります。
これはスピーチロックによって起こされるさまざまな弊害が原因となり、結果として介護職が拘束されたような状態となる事を指します。

 
スピーチロックによる弊害によって一人の利用者にかかる介助の時間が増加し、結果的にその利用者の状況に拘束される事となるのです。
これがスピーチロックでいう「間接的な拘束」となるのです。

 
スピーチロックは介護の負担を大きくします。
理由は先ほども紹介したスピーチロックのもつ「間接的な拘束」にあります。

 
スピーチロックは行った直後は仕事が一つ減ったように見えるかもしれませんが、利用者の出来る事が出来なくなってしまう悪循環を生み、更には他の利用者にも精神的な不安定さが伝染するという恐ろしさがあるのです。

 

スピーチロックを行わない介護が、今の利用者の状態を維持する事に繋がり、また介護の負担を大きくしない方法なのです。

 
スピーチロックを行わない介護が理想的であるとはいえ、現場が忙しすぎてスピーチロックに頼らざるを得ないと思っている人も居る事でしょう。
しかし、スピーチロックを詳しく見てみるとスピーチロックによって介護の負担がますます増えている事がわかります。

 
つまり、スピーチロックを廃止する事がむしろ介護の仕事を忙しくさせない手段なのです。

 
スピーチロックを廃止する事が難しいと感じている人は、まずは傾聴をするようにしてください。
そして、傾聴の後、待ってもらえるよう同意を得る事です。

 
傾聴というのは話し手の人の話を、そのまま受け止めながら聴く事です。
傾聴では、基本的に話し手が話したいことを話したいように、感じたままに自由に話してもらいます。

 
緊急事態を除いて、ちょっと待ってほしい状況であっても1分でも利用者の話を聞く事は出来ますよね。

 
利用者は介護職に話を聞いてもらえたという思いだけでも気持ちが少し落ち着くものなのです。
そして、落ち着いたところで「今他の人を手伝っている途中なので後でまた話を聞かせてもらえますか?」とお願いしてみましょう。

 
利用者の行動や思想を制限することなく、自由な意思決定の上で「待つ」という事を選択してもらえたのであれば言葉による拘束ではなく、言葉による自由な選択肢の提供という結果をうむのです。

 
傾聴は様々な場面で使える介護職最強の武器ともいえる手法です。
スピーチロック廃止に向けて傾聴を大事にしてみてください。
介護現場のスピーチロックは介護の負担を大きくする事については「介護のスピーチロック 利用者も介護職も拘束される介護」で詳しく解説していますのでチェックしていってください。

 

 

 

 

スピーチロック以外の拘束 身体拘束

身体拘束とは
スピーチロック以外の拘束としては、ご存知かとは思いますが身体拘束があります。

 
身体拘束というのは、施設や病院などで、高齢者を、「治療の妨げになる行動がある」、や「事故の危険性がある」という理由で、ひもや抑制帯、ミトンなどの道具を使用して、ベッドや車椅子に縛ったりすることをいいます。

 
では、具体的に身体拘束はどんな事が該当するのでしょうか?

 
身体拘束として扱われる行為について厚生労働省は次の通りまとめています。

  • 歩き回らないようにベットや車椅子に胴や手足をひもなどで縛り、歩けなくする。
  • ベットなどから転落しないようにベットに胴や手足をひもなどで縛り、動けなくする
  • ベットの周囲を柵などで完全に囲んだり、高い柵を使用するなどして自分では降りられないようにする。
  • 点滴や、鼻やおなかなどにつける栄養補給のチューブなど治療のための器材を自分で抜かないように、手足を縛ってしまう。
  • 点滴や、鼻やおなかなどにつける栄養補給のチューブなど治療のための器材を自分で抜かないように、あるいは皮膚をかきむしらないように、指を思うように動かせなくするミトン型の手袋などを使う。
  • 車椅子やいすなどからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型の専用ベルト、腰ベルト(紐)などで車椅子・椅子に縛りつけたり、胴にぴったりと密着するテーブルをつけて立ち上がれないようにしてしまう。
  • 立ち上がる能力のある人を、座面を大きく傾かせたりする椅子に座らせるなどして立ち上れないようにする。
  • 服を自分で脱いでしまったり、おむつをはずしたりしてしまう人に、介護衣(つなぎ)とよばれるような、自分では脱ぎ着ができない特殊な服を着させる。
  • 他の人に迷惑をかけないように、ベットなどに胴や手足をひもなどで縛る。
  • 興奮したり、穏やかでなくなったりした人を落ち着かせるために、鎮静させる効果がある精神に作用する薬(向精神薬)を過剰に使って動けないようにしてしまう。
  • 鍵をかけるなどして自分では空けられないような部屋に閉じこめる。

身体拘束は行われてはいけないものとして扱われている事は既にご存知のことだとは思いますが、本当にやむおえない場合については身体拘束が行われる事が認可されます。

 
厚生労働省は身体拘束の緊急、やむおえない場合の定義として次のような規定を設けています。

  • 「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たす事
  • 上記の3つの要件を慎重に確認・実施されている場合に限る

 
身体拘束を行われる事が認められる基準は、命の危険が迫る緊急事態であり、身体拘束以外に取るべき手段がなく、拘束を行う期間も一時的なものである必要性があります。

 
また、それらの要件を適正に判断、管理されているという事が認可の基準という事になります。

 
身体拘束をしてはいけないという理由については次のような物があげられます。

  • 身体拘束が原因で命を落とす事がある
  • 拘束が拘束を呼ぶ悪循環となりやすい
  • 身体拘束をしないから事故が増えるわけではない
  • 身体拘束は拘束される本人の精神的な負担が大きい

身体拘束については「身体拘束とは」で詳しく紹介していますのでチェックしていってください。

 

 

 

 

スピーチロックとは まとめ

スピーチロックとは まとめ
スピーチロックとは身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
具体的な例としては次のような言葉があげられます。

  • 動いたらダメ
  • 早く食事して
  • 立ち上がらないで
  • どうしてそんなことをするの

 
利用者の行動に対して、叱るような言動もスピーチロックの対象になります。
スピーチロックについては、現在どのような言葉が拘束として該当するか、はっきりとした判断基準はありません。

 
しかし、一般的に人として相手の尊厳を傷つける言葉や人権侵害に当たるような言葉はスピーチロックに該当するとの見解があります。

 
また、今まで生活してきた中で受けた心の傷や人間関係の中から、ふとした言葉で行動的な自由を奪われてしまうような利用者が居ます。
声掛けをした後の利用者の表情や行動は介護者として変化を見落とす事がないよう、注意する必要があるでしょう。

 
スピーチロックの特徴としては利用者の行動を制限する、あるいは強制的に行動させるような命令的な口調であるケースが多いです。

 
スピーチロックが命令的な言葉であったり、高圧的な言葉であると言った特徴を持っているのに対し、利用者の行動を制限しないような言葉がけには「利用者の同意」を得るような言葉が多くあります。

 
つまり、利用者を言葉で縛っていたのは「言葉が悪かった」だけであり、「利用者を思った言葉」を使う事で利用者の自由な選択のもと同意出来るような状況を作る事でスピーチロックを廃止する事が出来るのです。

 

 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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