介護の精神と社会

介護という人々を支える仕事について精神面や法制度などを交え 解説しています。

高齢者の社会環境の変化と心への影響

      2015/11/07


年を重ねるごとに、人はさまざまな事を経験します。
特に老年期は自分の体が思うように動かなくなる感覚を覚えるようになり、周囲や社会的な影響から精神的なダメージを受けやすい時期とも言えます。

 
また、社会的な変化と共に、その人自身の周囲の環境の変化もあり、中には大切な人を失う喪失体験もあります。
このような場合、精神的な影響を受ける事は容易に感じる事が出来ますが具体的にどのような影響を受けるのでしょうか。

 
この記事では、高齢者の社会環境の変化と心への影響について述べています。

 

 
高齢者の社会環境の変化と心への影響
 

 

高齢者が抱える自分へのイメージと社会環境について

高齢者が抱える自分へのイメージと社会環境について
社会からの老化に対する否定的な情報は、高齢者自身の自己イメージに対して否定的な影響を強めると考えられます。

 
例えば、他の人や社会から「年を取ったのだから、社会とかかわらなくても良い」といった事を直接的・間接的に表現されると、ますます自己イメージが悪化していきます。
「自分は老いた」と思って居る人が居た場合、このようなメッセージは更にその人の「老い」のイメージを強める事に繋がり、イキイキとした生活を妨げる要因にもなります。

 
このような悪循環を断ち切るためには、高齢者に対して積極的な活動や参加を評価する事が必要と言えます。

 

 

 

 

家族との関係の変化と心への影響

家族との関係の変化と心への影響
高齢者にとって家族との関係は、以前にもまして重要になってきました。
内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」では「心の支えとなっている人」に関する調査結果で「配偶者」と「子供」がそれぞれ50%を超える事がわかりました。

 
しかし、近代の日本では急速に家族の構造は変化しています。
家族形態の多様化が進み、現在では単独世帯と高齢者夫婦のみの世帯が合わせて約半数を占めて居ると言われています。
様々な家族のかたち 介護をする上で知っておく事」では多様化を続ける家族のかたちについての枠組みを紹介しています。

 
この事からわかる事は「高齢者が配偶者や子供を心の支えとしていても、必ずしも同居をしているとは限らない」状況と言えます。
このような家族関係の変化のなかで「配偶者や子供と同居している人」に対し「同居していない人」はネガティブな精神状態に陥りやすいです。

 
実際に旦那様は特別養護老人ホームで過ごし、奥様は自宅で子供達と暮らしているといった方もいらっしゃいます。
特別養護老人ホームで過ごす旦那様はよく「帰りたい」「さみしい」と訴えるそうです。

 
このような事から家族との関係の変化は、高齢者の心へ大きな影響を与えると言えます。
急激に進んだ世帯構造の変化に対して、家族の関係や機能を考えていく事は今後の大きな課題と言えます。

 

 

 

 

老年期の喪失体験と心への影響

老年期の喪失体験と心への影響
老年期の社会的関係の変化の特徴として、喪失体験があげられます。
特に長年連れ添った配偶者との人間関係が重要であるという思いを持っている場合に、その方との死別は残された高齢者の方の心に大きな影響を与えます。

 
喪失体験をした人の心は「喪失⇒悲嘆⇒回復」という経過をたどると言われています。
喪失体験による悲嘆から回復に至る過程にはいくつかの段階がある事が知られていますが、基本的には「キューブラーロス」の死の受容過程に類似した考え方が示されています。

 
キューブラーロスはアメリカの精神科医で、死の直前の重症患者から直接、面接や聞き取りをして、その心理過程を「死ぬ瞬間」などにまとめた人です。
人が死を受容するまでには5段階のプロセスがあると示しています。キューブラーロスについては別の記事で紹介いたします。

 
ここでいう「喪失」とは、感情的に強く結びついていた対象が自分の人生から失われたことを意味しています。
喪失した事を悲嘆する事で、情動的、知覚的、身体的なさまざまな反応が生じます。

 
その状態から抜け出し、喪失対象が居ない生活を再構築する事が「回復」と考えられます。

 
配偶者と死別した人は、身体的愁訴が多かったり、医療機関への受信が多かったりするといったストレスに対する心身の反応の現れ、健康を損なう事すらあります。

 
また、死をめぐる儀式である葬儀は、死者の社会的価値や市に対する信仰を表明し、死者に別れを告げる機会として行われます。
同時に、残されたものの悲嘆を和らげ、死について見つめ、死んでしまった人がいない人生を考える機会でもあると言われます。

 
このように、喪失体験は精神的な影響が強い事があげられますが、精神的なストレスが身体に及ぼす影響が大きい事を理解しておきましょう。

 

 

 

 

まとめ

指
この記事のまとめです。

  • 社会からの老化に対する否定的な情報は、高齢者自身の自己イメージに対して否定的な影響を強めると考えられます。
  • 悪循環を断ち切るためには、高齢者に対して積極的な活動や参加を評価する事が必要と言えます。
  • 高齢者にとって家族との関係は、以前にもまして重要になってきました。
  • 「高齢者が配偶者や子供を心の支えとしていても、必ずしも同居をしているとは限らない」状況があります。
  • 家族関係の変化のなかで「配偶者や子供と同居している人」に対し「同居していない人」はネガティブな精神状態に陥りやすいです。
  • 急激に進んだ世帯構造の変化に対して、家族の関係や機能を考えていく事は今後の大きな課題と言えます。
  • 老年期の社会的関係の変化の特徴として、喪失体験があげられます。
  • 喪失体験をした人の心は「喪失⇒悲嘆⇒回復」という経過をたどると言われています。
  • 「喪失」とは。感情的に強く結びついていた対象が自分の人生から失われたことを意味しています。
  • 喪失した事を悲嘆する事で、情動的、知覚的、身体的なさまざまな反応が生じます。
  • その状態から抜け出し、喪失対象が居ない生活を再構築する事が「回復」と考えられます。
  • 喪失体験は精神的な影響が強い事があげられますが、精神的なストレスが身体に及ぼす影響が大きい事を理解しておきましょう。

 
生活様式の変化や、隣にいる事が当たり前だった人を失う事は人の精神に耐え難い苦痛を与えます。
周囲の人はこの事をよく理解し、その人が少しでも社会参加を果たせるような機会を設けたり、その人の今の状況を客観的に見て、相手のペースに合わせた言葉をかけていく事が重要と言えます。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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