介護の精神と社会

介護という人々を支える仕事について精神面や法制度などを交え 解説しています。

利用者の今までを考える 仕事と官僚制への理解

      2015/11/07


利用者の方の今までの生活について考えていくうえでは、利用者の方が今まで関わってきた「仕事」との関わり方を知る事もポイントの一つとなってきます。
今までの日本の仕事の関わり方を象徴する考え方として「官僚制」に対して理解を深めてみましょう。

 
この記事では官僚制やヒエラルキーといった組織機能について紹介しています。

 

 
ピラミッド
 

 

官僚制とは

憲法
 
「官僚」と聞くと「天下り」などでマスメディアを通してたびたび伝えられた事でマイナスイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、「官僚制」そのものは、複雑で大規模な組織の目的を効率よく達成する為の管理運営体系であり、規模が大きい組織であれば多くの組織が管理体制として考える仕組みの一つです。

 
官僚制の特徴としては次のようなものがあります。

 

  • フォーマルに制定された理にかなった規則による支配
  • ヒエラルキーの形式をとった権威と権限の構造
  • 非人格的な人間関係
  • 各部署の専門化

 
官僚制は定められた理にかなった規則に基づいて運営されているため、特定の個人の横暴や好き勝手な振る舞いは排除されます。
現実的な職場ではこういった個人的な横暴や好き勝手な振る舞いは「パワハラ」とされ、措置が取られてる事が多いです。

 
ヒエラルキーとはピラミッド型と言われる考え方を表現する概念です。
官僚制では権威や権限がピラミッド型に配分され、命令や上から下へおりていき、責任は下から上に重くなっていきます。
このヒエラルキーを用いた組織内の人間関係は公私は完全に分離され、個人の私的な関係性や思いではなく、規則に従って限定的な職務を果たす事が求められます。

 
各職務は規則に基づいて部署ごとに専門分化しているので、職務を行う上では専門的な訓練や専門的な教育が必要であるといった特徴があります。

 
これまでに紹介しました官僚制の特徴は、大規模な組織では仕事を効率的に行う上で極めて優れた考え方を持っていて、合理的な仕事の仕方を求める近代の社会でも行政組織や企業組織でも官僚制が大部分を占めていると言われています。

 
現代社会では様々な企業形態をとっている所もありますが、利用者の方の中では高度経済成長のさなか、官僚制の中で仕事をしてきた経緯を持っている方もいらっしゃいます。

 
官僚制の組織の中で、どれほどの権威を持った方だったのかを知る事により、その人の尊厳を大事にする事へとつながっていくのではないでしょうか。

 

 

 

 

官僚制が持つマイナスの側面

権利侵害
 
これまでの紹介では官僚制の優れた面について述べてきました。
その一方で「お役所仕事」などと言われるように、形ばかり重視して効率的でない仕事の仕方になってしまうのも「官僚制」が持つマイナスの側面です。

 
時には融通の利かない対応になることもあり、良い印象を抱かない事もあるかもしれません。

 
官僚制組織においては規則をきちんと守る事は、あくまで組織の目的を効率的に達成する為の手段です。
しかし、規則を守ることに集中するあまり、「仕事を終える」事が目的ではなく「ルールを守る」事が目的であるといった考えに変わってしまう事もしばしば見受けられます。

 
特に近代は変化が激しく様々なニーズが生まれていく中で変化する状況に対して迅速に適応できなくなるといった事が起きてしまう事もそれにあたります。

 
特に「多種多様に動ける人材」が求められる中で、こういった制度が足かせとなり個人の能力を十分に活かしきれない組織もあるのではないでしょうか。

 
こういったマイナスの側面について良く知ってきた利用者の方の中には、「融通が利く人間」が好まれる事が多いように思います。
そして「規則だからできない」という言葉を嫌う人も中にはいます。
その考えはもしかすると官僚制が持つ「マイナスの側面」が影響しているかもしれませんね。

 

 

 

 

集団・組織における人間関係と役割

会議
 
集団や組織についての定義などについては「チームケアの基本 集団や組織とは」で紹介しているので参考になれば幸いです。

 
効率的に目標を達成する為に作られた組織も、人間が集まり構成している以上、思い通りにならない事は今までの経験上、ご存知かと思います。

 
今までに紹介してきた官僚制がプラスの側面とマイナスの側面を持つこともそういった一例の一つです。

 
私たちが何気なく暮らしている集団や組織ですが、「生きた人間の集まり」として科学的に認識されるようになったのは1920年代に行われた「ホーソン実験」と呼ばれる実験がきっかけでした。

 
これはは物理的な環境条件が作業効率と、はっきりとした関係を持たない事や、物理的な環境よりも人間の感情や態度が仕事における生産機能を高める事、人間関係や監督のあり方などの集団と個人の関係が重要である事などを明らかにした実験です。

 
この実験の結果により人を規則で縛りつけたり、報酬を増やすことを条件にしても、人を思い通りに働かせる事は必ずしもできないし、職場内の仲間集団や付き合いといった側面も、組織の目標達成には大きな影響力を持つという事が確認されました。

 
介護福祉士などの介護に携わる人は利用者のQOL(生活の質)の向上を目指す専門的なチームという側面を持つと同時に、勤務する福祉施設や医療関係機関などに所属する職員でもあります。

 
集団や組織とのかかわり方は、その関わりの内容に応じた複数の社会的な役割を個人に担わせます。
その中で、専門的なチームとして目指す目標と、施設と法人が目指す目標との間に摩擦が生じ、個人に葛藤を生み出す事もあるでしょう。

 
そういった葛藤に対して、個人としてどう考えていくか、どう取り組んでいくかを考えていくことも暮らしを支える専門家としての腕の見せ所とも言えます。

 

 

 

 

まとめ

指
 
この記事のまとめです。

 

  • 官僚制は次のような特徴を持っていて、利用者の方の中にはこの組織体系の中で過ごしてきた方も少なくありません
    • フォーマルに制定された理にかなった規則による支配
    • ヒエラルキーの形式をとった権威と権限の構造
    • 非人格的な人間関係
    • 各部署の専門化
  • 官僚制は大きな規模の組織では優れた運営方法の一つとなりますが、マイナスの側面を持っている事も認識しておきましょう
  • 集団や組織の中で個人とのかかわりの中では個人と組織の目標の間で葛藤が生まれる事もあります。

 

 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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