【認知症】実行機能障害への対応 計画や段取りを立てられない、状況を判断できない
2017/04/04
認知症の症状の一つに、やりたい事が出来なくなる症状があります。
夏なのにダウンジャケットを着ている人、逆走してしまう車、流されていないトイレなど、社会常識といわずとも普通の人なら自分で判断できる事も、認知症の人には判断が難しくなる事も多いです。
本人が事故にあってしまったり、逆に加害者になってしまう事もあり、認知症の人への対応には周囲の配慮が大切になってきます。
場合によっては介護サービスの利用を検討する必要も出てくるでしょう。
では認知症のこのような状態に対応していくにはどのようにしていけば良いのでしょうか?見ていきましょう。
目次:
認知症の実行機能障害とは
計画や段取りを立てられない、状況を判断できないことを実行機能障害といいます。
記憶の障害と同様に、早期からみられます。
どうも最近、母親の料理の味が変わってきた、料理が得意だった人なのに献立がいつも同じになってきたなどの日常生活での変化がしばしば経験されます。
先の予定を立てることも 不得意になります。
このような変化は直接記憶の障害に関連しないために、認知症の症状かもしれないとは考えないことが多いので要注意です。
実行機能障害への対応
実行機能障害への対応は、家族や身近な人への負担が大きくなる特徴があり、普段の生活をしているうえで当たり前の行動がとれなくなってしまいます。
トイレの後始末や、料理が出来なくなる、衛生管理が出来なくなったり、季節や目的に合わせた衣類の選択が出来なくなってしまいます。
また、自分の状態を把握する事も困難になるため、車の運転をしたがる人も居ます。
実行機能障害への対応は、その人にとって身近な人が、その人の行動を支援できるよう管理していく事が必要になってきます。
また、場合によってはショートステイやデイサービスのような介護サービスの利用を検討する事も重要です。
排泄後の始末が出来ない
便などの排池をしたあとに、水をきちんと流さない、便で便器を汚してしまう、服の身縫いをきちんとできないなどの症状がみられることがあります。
これらの症状は実行機能障害だけではなく、失行による症状も含まれます。
また、昔、水洗トイレはありませんでしたし、洋式の便器もありませんでした。
そのため、認知症が進んだ状態で、子供の時に戻っているとすると、いまの便器を、便器と認識することができず、洗濯物を便器ですすいだりする行動をとってしまいます。水洗トイレと認識できていなければ、水を流すこともしません。
このような行動が見られた時にどうすればいいのでしようか。
簡単に解決できる方法はありませんが、怒ったり、叱ったり、言い聞かせようとしてもまったく効果がないことは理解しておく必要があります。
本人の混乱を増してしまうだけの結果になり悪循環になります。家族の負担は莫大ですが、その都度、始末するか、さりげなく誘導するしかないようです。
具体的な行動を見やすい場所に大きな字で書いておくことも一つの方法です。
料理が出来なくなる、毎回同じメニューになる
カレーは作れないけれど、ジャガイモの皮をきれいに剥けるおばあさん、ほうれん草のおひたしはできないけれど、きれいにほうれん草を洗えるおばあさん。
いずれも料理はできません。料理には手順が必要ですが、その段取りをうまくつけることができなくなるために起きる症状です。
注意が必要なことは、段取りがうまくできなくなるだけで、一つひとつの行為はきちんとできるということです。
ここ半年、母親から豚肉のソテーしか食べさせてもらえなかったという息子から相談を受けたことがあります。それまでは自分で料理をしていたおばあさんが、出来合いのもので済ませることが多くなり、そのことを尋ねると、「だって一人とか二人分だと作るよりも買ってきたほうが無駄にならないんですよ」と誰が聞いてもなるほどと思ってしまう説明が返ってきます。
このように料理ができなくなる、毎回同じメ二ユーになる、という変化は実行機能障害の典型的な症状です。
その他に、鍋を焦がすとか、しまい忘れや置き忘れが目立ったりすれば、家族も認知症の始まりを疑うことができるかもしれません。
しかし、料理の手順だけが下手になっただけではなかなか認知症かもしれないとは思い至らないでしよう。
手が不自由になったとか、特別な理由がなくて、このような変化が最近目立ってきた時には、認知症の始まりを疑うことができます。
この程度の時であれば、きちんと本人に説明すれば受診したほうがいいということも理解できるはずです。
きたなくても平気
「今日はお風呂に入ってくださいね」「もう臭くて困ります」と家族が怒鳴っても、「昨日入りました」などと本人は一向に平気です。
認知症では、同じ服を着たままだったり、なかなか着替えないということがしばしばあります。
それまできれい好きだったかどうかは関係ないようです。つまり清潔に身体を保つたり、身奇麗にしておくことの段取りがわからないでいることが原因でもあります。
記憶の障害などに比べてあまり目立つ症状ではありませんが、意欲の低下が認知症では起こることもーつの理由でしよう。むろん、状況の判断ができないことも加わっているので話は複雑になります。
意欲の低下が目立つ場合、本人が面倒くさがっているだけと思いがちです。何週間も入浴しなければ、自分でもふつうは臭いなどが気になるはずですが、認知症の人は気にならないようです。
家族が勧めたり、言い間かせようとしてもふつうはうまくいきませんが、デイサービスなどを利用した時に入浴できることもあります。
何の手間もかからないからサービスは利用しなくても大丈夫と思っている時からでも、本人と家族がサービスの利用に慣れておくことに意味があります。
季節や目的に合わせた衣類の選択が出来ない
真夏にもかかわらず、雨戸を閉め切ってコタツをつけ、セーターを着込んでいる。またダウンジャケットにはだしといういでたちもあります。
季節や目的に合わせた衣類の選択ができないという変化も典型的な実行機能障害の症状です。
今日はいつもより寒いから一枚余計に着ようという状況判断ができな<なってくるために起きてきます。
普段着と外出着の区別ができなくなることも同じです。もともとお酒落だったりすれば、このような変化はとても目立つでしよう。
季節に合った服装ができても、色の取り合わせのパランスが悪くなるという変化として現れることもあります。
女性であれば、うまく化粧ができなってくることで気づかれることもあります。
アルツハイマー型認知症では軽度から中等度に進行した時期で見られやすい症状です。
こんな場合、入浴の時に一枚減らしたり足したり、デイケアなどで留守にしている間に更衣してお<のも手ですね。
服を着る時に、前後や裏表を間違える、あるいは上着の袖に足を通そうとする行動は実行機能障害という変化ではなく失行といわれる症状になります。
一緒に行ったり、さりげなく声をかけたりするといいでしよう。
車の運転をしたがる
軽トラを運転していたおじいさん。
認知症になって、小さな事故を起こすことがあり、軽トラは家族に処分されてしまいました。
おじいさんは自転車で出歩くことが多くなりましたが、田んぼで他人の軽トラを見つけては運転して「散歩」を始めます。どうしても運転したいのです。
いまの道交法では認知症と診断されると重症度とは関係なく運転免許は停止あるいは取り消し、アルツハイマー型認知症あるいは血管性認知症と診断されると取り消しになります。
車の運転が趣味だったりすると、認知症と診断されてもなかなか運転をやめなかったり、やめさせようとしてもかえって怒り出したりすることがあるでしよう。乗れないように家族が車を処分しても、新車を買ってきてしまったという例もあります。
自動車の運転でもそれまでは自然にできていた動作がぎこちなくなったり、間違えてしまうことがあります。自動車を運転する時には、周囲の状況を判断しながら、状況にあった適切な動作が必要になります。
まさに実行機能が必要になるわけですが、その障害が認知症の初期症状としてみられることがあります。
実行機能ではありませんが、認知症では視空間の位置関係をうまく捉えることが不得意になりますから、車庫入れが下手になって擦ることが多くなったなどの変化で現れます。
視空間能力の高度な障害では、いま入ってきたばかりのドアから出て行くことができなくなったりします。
車の運転に関することは本人や家族への影響だけでは済まされず、大事に至ることも出てきます。認知症が疑われて車の運転をしている時にはぜひ認知症の専門医に相談してください。その時期いったん施設に入所して解決した例もあります。
認知症の対応 あわせて知っておきたい
高齢化社会に入り、世間的にも注目されつつある「認知症」
一般的な認知症の症状としては「物忘れ」ではないでしょうか。
しかし、実際に認知症の人の人を対応したことのある人は「えっなんでそんなことをするの?」と疑問に思うような行動を目の当りにする事もあったのではないでしょうか。
認知症の人への対応は、一般的な人間関係とは異なる対応が必要になってきます。
では、今後関わっていく可能性の高い「認知症」の人へどのように対応し関係を築いていけばよいのでしょうか。
認知症から来るさまざまな症状とその原因毎に対応を方法を述べています。
詳しくは「【認知症】認知症の人への対応 わけわからない!を解消しよう」で紹介しているのでチェックしていってください。
まとめ:実行機能障害への対応 計画や段取りを立てられない、状況を判断できない
計画や段取りを立てられない、状況を判断できないことを実行機能障害といいます。
記憶の障害と同様に、早期からみられます。
実行機能障害への対応は、家族や身近な人への負担が大きくなる特徴があり、普段の生活をしているうえで当たり前の行動がとれなくなってしまいます。
トイレの後始末や、料理が出来なくなる、衛生管理が出来なくなったり、季節や目的に合わせた衣類の選択が出来なくなってしまいます。
また、自分の状態を把握する事も困難になるため、車の運転をしたがる人も居ます。
実行機能障害への対応は、その人にとって身近な人が、その人の行動を支援できるよう管理していく事が必要になってきます。
また、場合によってはショートステイやデイサービスのような介護サービスの利用を検討する事も重要です。
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