介護の精神と社会

介護という人々を支える仕事について精神面や法制度などを交え 解説しています。

身体拘束の事例 拘束のない介護を目指すために

      2015/11/07


介護・病院の現場では身体拘束が世間的に問題視されるようになってきました。
身体拘束は命の危険があり、やむおえないと判断された場合、行われる最後の手段の一つです。

 
しかし、現場の実態として、現実的に身体拘束に頼らざるを得ないような状況と考え、身体拘束を行ってしまう、または身体拘束を廃止する事が出来ない病院や介護施設などがあります。

 
身体拘束を行われる人は、本人が悪いわけでもなく身体拘束が行われている事例もあり、「集団生活」を意識した上で身体拘束が行われる事が多いのです。

 
では、身体拘束とはいったいなんなのでしょうか?
身体拘束にはどんな事例があるのでしょうか?

 
身体拘束の事例についてまとめましたのでチェックしていってください。

 

 
身体拘束

 

 

身体拘束とは

身体拘束とは
身体拘束というのは、施設や病院などで、高齢者を、「治療の妨げになる行動がある」、や「事故の危険性がある」という理由で、ひもや抑制帯、ミトンなどの道具を使用して、ベッドや車椅子に縛ったりすることをいいます。

 
では、具体的に身体拘束はどんな事が該当するのでしょうか?

 
身体拘束として扱われる行為について厚生労働省は次の通りまとめています。

  • 歩き回らないようにベットや車椅子に胴や手足をひもなどで縛り、歩けなくする。
  • ベットなどから転落しないようにベットに胴や手足をひもなどで縛り、動けなくする
  • ベットの周囲を柵などで完全に囲んだり、高い柵を使用するなどして自分では降りられないようにする。
  • 点滴や、鼻やおなかなどにつける栄養補給のチューブなど治療のための器材を自分で抜かないように、手足を縛ってしまう。
  • 点滴や、鼻やおなかなどにつける栄養補給のチューブなど治療のための器材を自分で抜かないように、あるいは皮膚をかきむしらないように、指を思うように動かせなくするミトン型の手袋などを使う。
  • 車椅子やいすなどからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型の専用ベルト、腰ベルト(紐)などで車椅子・椅子に縛りつけたり、胴にぴったりと密着するテーブルをつけて立ち上がれないようにしてしまう。
  • 立ち上がる能力のある人を、座面を大きく傾かせたりする椅子に座らせるなどして立ち上れないようにする。
  • 服を自分で脱いでしまったり、おむつをはずしたりしてしまう人に、介護衣(つなぎ)とよばれるような、自分では脱ぎ着ができない特殊な服を着させる。
  • 他の人に迷惑をかけないように、ベットなどに胴や手足をひもなどで縛る。
  • 興奮したり、穏やかでなくなったりした人を落ち着かせるために、鎮静させる効果がある精神に作用する薬(向精神薬)を過剰に使って動けないようにしてしまう。
  • 鍵をかけるなどして自分では空けられないような部屋に閉じこめる。

 
身体拘束は行われてはいけないものとして扱われている事は既にご存知のことだとは思いますが、本当にやむおえない場合については身体拘束が行われる事が認可されます。

 
厚生労働省は身体拘束の緊急、やむおえない場合の定義として次のような規定を設けています。

  • 「切迫性」「非代替性」「一時性」の3つの要件を満たす事
  • 上記の3つの要件を慎重に確認・実施されている場合に限る

 
身体拘束を行われる事が認められる基準は、命の危険が迫る緊急事態であり、身体拘束以外に取るべき手段がなく、拘束を行う期間も一時的なものである必要性があります。

 
また、それらの要件を適正に判断、管理されているという事が認可の基準という事になります。

 
身体拘束をしてはいけないという理由については次のような物があげられます。

  • 身体拘束が原因で命を落とす事がある
  • 拘束が拘束を呼ぶ悪循環となりやすい
  • 身体拘束をしないから事故が増えるわけではない
  • 身体拘束は拘束される本人の精神的な負担が大きい

 
身体拘束とはなにか、という事については「身体拘束とは」で詳しく紹介していますのでチェックしていってください。

 

 

 

 

身体拘束の事例

身体拘束の事例
身体拘束の具体的な事例としては次のような事例があります。

  • ベッドに手を縛る拘束
  • 手指を自由に使えない拘束
  • ベッドに腹部を固定する拘束
  • ベッドから下りられないようにする拘束
  • 車椅子から立てないようにする拘束
  • 部屋から出られないようにする拘束

 
体に直接器具を付けて身体拘束が行われるケースや、体には直接器具をつけないけれど現実的に拘束されて居るような状態、または監禁に近しい状態など身体拘束には様々あります。

 
それぞれ見ていきましょう。

 

 

 

身体拘束の事例 ベッドに手を縛る拘束

身体拘束の事例 ベッドに手を縛る拘束
ベッドに手を縛る拘束は主に病院や療養型の介護施設でベッドに手を縛る身体拘束が行われる場合があります。
また、身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者など自分が治療を受けている事が認識できない人や治療中の器具を抜いてしまうような人が多いです。

 
ベッドに拘束具で身体を固定しないと、体のチューブを抜いて健康リスク、命の危険があると判断される場合に身体拘束が行われるケースが多いでしょう。

 
病院や施設によっては、体にチューブを挿入している間だけ身体拘束を行っている場所もありますが、残念なことに身体拘束を慢性的に毎日一日中している病院や施設もあります。

 
身体拘束は厚生労働省で定めるところの「一時性」を持って行われるべきであり、定められていなかったとしても身体拘束され、体が固定された人の精神的、身体的な健康リスクを考慮すると慢性的に身体拘束を行うべきではないでしょう。

 

 

 

 

身体拘束の事例 手指を自由に使えない拘束

身体拘束の事例 手指を自由に使えない拘束
手指を自由に使えない拘束は病院や療養型の介護施設以外でも、在宅・特別養護老人ホームなどでも行われる可能性のある身体拘束です。
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者や精神的な病気を持っていて体をかきむしってしまったり、オムツを外してしまうような人が多いです。

 
主に身体拘束にはミトンと呼ばれる拘束具を用いられます。

 
ミトンは手や腕は自由に動かす事が出来ますが、手指を自由に使えないとなると物を十分につかむことが出来ないなど、生活上の不便さを伴う拘束となります。

 
認知症になった人や精神的な病気を持っている人の中には、体の痒みを常時訴える人がいます。
病院で検査を行っても原因が特定できないほか、本人は痒みの苦痛を逃れるために、体を血が出る程かきむしってしまう事があるのです。

 
病院・施設によっては食事の時間にはミトンを外す等、常時利用をしない様取り組んでいる所もありますが、ミトンを外した途端、発狂するかのように体を掻き毟ってしまう等の理由から、ミトンを外さず食事などの介助を介護職員が行う場合もあります。

 
ミトンは比較的、身体的な自由度は高い身体拘束と言えますが、拘束を受けた本人の精神的な苦痛を考慮すると、精神的な健康被害は高いと言えるでしょう。

 

 

 

 

身体拘束の事例 ベッドに腹部を固定する拘束

身体拘束の事例 ベッドに腹部を固定する拘束
ベッドに腹部を固定する拘束は主に病院や療養型の介護施設で行われる場合があります。
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者で徘徊をしてしまう人や、足の治療を受けている人、ピック病などが原因で他の人の命の危険などが迫ってしまう場合など歩けない身体状態だけれども歩いてしまったり、社会的な規範を認識する能力がいちじるしく低下した人が多いです。

 
ベッドに腹部を固定する拘束は胴抑制と呼ばれ、胴抑制帯と呼ばれる拘束具を用いて身体拘束が行われます。

 
認知症の人は自分の身体状況や治療の方針を適切に判断・記憶する事が出来ないケースが多く、日常的な骨折を避ける為に行われる事が多いのが現状です。

 
また、ピック病などが原因で他の人に暴力行為等が見られ、他の人の命の危険が迫っていると判断されると余儀なく拘束される事もあるそうです。

 

病院や施設によっては、治療を行っている間は身体拘束を行い、完治すれば拘束を外す所があります。
しかし、残念なことに他の身体拘束と同様に、身体拘束が日常化し、治療後も身体拘束が終わらないケースもあるのです。

 
胴抑制は体をベッドに固定され、拘束具のタイプによっては寝返りすら打つ事が出来ないものもあるため、長期化すれば深刻な健康リスクを伴う拘束でもあります。

 
胴抑制帯が使われている所から褥瘡が出来てしまう人も居る為、身体拘束を一時的な物として扱う必要があります。

 

 

 

 

身体拘束の事例 ベッドから下りられないようにする拘束

身体拘束の事例 ベッドから下りられないようにする拘束
ベッドから下りられないようにする身体拘束は主に病院や療養型の介護施設の他、在宅の介護や施設型介護でも行われる場合があります。

 
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者で徘徊をしてしまう人が多く、とりわけ身体機能が低下している人が多いです。
ベッドから降りられないようにする拘束は、ベッドに4点柵と呼ばれる柵を用いて行われます。

 
4点柵は健康な体を持つ人であれば容易に乗り越える事が出来ますが、高齢者等、老化の影響で身体機能が低下している人には乗り越える事は困難であり、ベッドに拘束された状態と同じです。

 
ベッドから何とか下りようとして4点柵を乗り越えて転落する事故もあります。

 
他の身体拘束と比較すると身体が固定されていないように見えますが、やはりベッドから出る事が出来ないという意味では空間的に身体拘束を行っている物として扱う事が出来るのです。

 
ベッドのサイドレール(柵)は主に寝返りなどの体の動きがあった場合の、転落予防の働きをする事を考慮すると4点柵のような使い方は望まれる使用方法とは異なるでしょう。
 

 

 

 

 

身体拘束の事例 車椅子から立てないようにする拘束

身体拘束の事例 車椅子から立てないようにする拘束
車椅子から立てないようにする身体拘束は主に病院や施設介護など幅広く用いられる場合があります。

身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者で足(下肢)の筋力が低下していたり、骨折などの何かしら歩行移動にリスクを抱える人が多いです。
車椅子から立てないようにする拘束は、車椅子にY字抑制帯と呼ばれる車椅子と体を固定する為の帯が使用されます。

 
認知症の人は自分の身体状況を正常に判断する事が出来ず「歩ける」と思ってしまい、立ち上がって歩こうとするのです。
主に車椅子から立てないようにする拘束には「転倒予防」を望んで行われる事が多いです。

 
Y字抑制帯の使用により、車いすに強制的に体が固定される形になるので、精神的な負担は大きいと言えます。
健常な人であってもずっと同じ姿勢で、椅子に座り続けたら体が居たくなったり、血流が滞るなど身体的な影響がある他、精神的な苦痛を感じるのと同様に、Y字抑制帯によって身体拘束された人も身体的・精神的な苦痛があります。

 
Y字抑制帯による拘束は「転倒予防」の見方で見ると正当な方法に見えるかもしれませんが、必ずしも正当な理由であるとは言い切れません。
転倒予防の観点から見ると、見守りの強化や職員体制の強化、情報の連携や、施設や病院の環境整備を含め様々な「代替性」を考える事が出来るからです。

 
身体拘束は命の危険があり、他に手段がなく、一時的な対処として用いる必要があります。
転倒予防のような「予防」の観点で身体拘束を行うべきではないでしょう。

 

 

 

 

身体拘束の事例 部屋から出られないようにする拘束

身体拘束の事例 部屋から出られないようにする拘束
部屋から出られないようにする身体拘束は主に病院や施設介護など幅広く用いられる場合があります。

身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者でピック病などの症状が強く出る人や、感染リスクの高い疾病を持っている人が多いです。
部屋から出られないようにする拘束は利用者・患者には開ける事が出来ないカギを部屋に付け、そこで生活させる事によって行われます。

 
主に感染リスクの高い疾病を持っている人は隔離という形で感染の蔓延を防ぐよう認められていますが、身体拘束の事例では認められた方法とはまた別の理由で部屋に閉じ込められてしまいます。

疥癬(ダニ感染)などの感染リスクがある人で認知症の徘徊が強い人などが身体拘束の対象となる事があるのです。

 
部屋から自分の意思で自由に出入りが出来ないという事は、状況的に監禁されているものと近い状況にあると言えます。

 

 

 

 

身体拘束が虐待に繋がる事がある事を認識する

身体拘束が虐待に繋がる事がある事を認識する
身体拘束は拘束された本人の自由を奪う行いです。

 
身体拘束は命の危険のある、やむおえない場合の一時的な対処として用いられるべきですが、介護の現場では、「介護職の仕事の都合」を優先させた結果として身体拘束を行う事態が起きてきました。

 
現在でも、一部の介護施設では必要性のない身体拘束が行われているという実態もあります。

 
介護職員として働く人は自分が利用者に対して虐待など行うはずがないと思っている人でも、身体拘束を通して虐待と同じような状況を作ってしまうのが身体拘束の恐ろしいところです。

 
介護の現場では主に集団生活が重んじられてきた経緯があり、身体拘束は集団行動を行う上での「必要悪」として扱われてきた経緯があるのです。
身体拘束が継続的に行われてきた現場で働く介護職員の中には、利用者を人として認識する感情が麻痺し、利用者を人と思えないという人も居ます。

 
また、良心の呵責から、介護職員自身が精神的な病気になってしまう人も居ます。

 
利用者を人として扱う事が出来なくなった介護職は、利用者の人権を考える事が難しくなり、結果として虐待すらも「必要悪」として認識するような思考となるケースもあるのです。

 
身体拘束は、人の生活の中では命を救うための最終手段として用いるべきであり、利用者を物として扱うような身体拘束は決して行うべきではないでしょう。
このような倫理の元、身体拘束廃止に向けた取り組みを行う介護施設が増えてきています。

 

 

 

 

身体拘束が行われやすい状況

身体拘束が行われやすい状況
身体拘束は全体的に認知症の人に対して行われる事が多いです。
認知症はいろいろな社会的な規範を認識する能力は、身体的な感覚機能の低下等を招き、記憶障害を引き起こす病気です。

 
認知症の本人としては、何の不思議の無い行動であっても、周りから見ればありえない行動に見える事が多いのです。

 
身体拘束は命の危険があり、やむおえない場合に一時的に行われるべきですが、認知症の行動・心理症状への適切な対応が出来ず、その場の行動だけにとらわれ対処しようとするため、結果として身体拘束に頼らざるを得ない状況となってしまう事も多いです。

 
認知症の人の症状の中に「徘徊」があります。
認知症の人の「徘徊」には必ず「目的地」があり、そこに向かって歩き続けるケースが非常に多いのです。

 
介護施設の中には「徘徊するから身体拘束」というような状況となってしまっている事も現実です。
認知症の人の症状や徘徊について理解する事によって、身体拘束を行わなくても適切な対処を行う事が出来ます。

 

認知症によって起こる行動に対処する為に身体拘束を行っているのであれば、認知症についてより深い理解を持ち、適切な対処をする事によって身体拘束廃止を目指したいものですね。

 

 

 

 

身体拘束が原因で介護職がうつになる事も

身体拘束が原因で介護職がうつになる事も
身体拘束が行われる事が日常的になってくると、介護職員が利用者を大切に思う気持ちや意識も低下してきます。
また、介護現場と日常生活の間に更に大きなギャップを生むこととなり、仕事に対する熱意ややる気も低下してきます。

身体拘束は利用者の安らかな日常を奪い行為である反面、介護職の健康的で安らかな日常を奪う行為でもあるのです。

また、仕事と日常生活の間でギャップが大きければ大きいほど、仕事に行くときの「仕事に行きたくない」という気持ちも大きくなりがちになり、最悪の場合、うつになってしまう人も居ます。

身体拘束に頼った介護を介護職が続けてしまうと介護技術の質を高められないという思いを抱えたり、介護に対する価値観が低下したり、人として大切な気持ちや感情が麻痺する事で、うつ以外の多くの精神的な病気にもかかりやすいと言った劣悪な状況を生みかねません。

 
このように身体拘束は利用者のみならず、介護職員の生活すらも寒く、暗いところに拘束してしまうのです。

 

 

 

 

スピーチロック 身体拘束以外の拘束

スピーチロックとは
身体拘束以外の拘束としてはスピーチロックという物もあります。
スピーチロックとは身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
具体的な例としては次のような言葉があげられます。

  • 動いたらダメ
  • 早く食事して
  • 立ち上がらないで
  • どうしてそんなことをするの

 
利用者の行動に対して、叱るような言動もスピーチロックの対象になります。
スピーチロックについては、現在どのような言葉が拘束として該当するか、はっきりとした判断基準はありません。

 
しかし、一般的に人として相手の尊厳を傷つける言葉や人権侵害に当たるような言葉はスピーチロックに該当するとの見解があります。

 
また、今まで生活してきた中で受けた心の傷や人間関係の中から、ふとした言葉で行動的な自由を奪われてしまうような利用者が居ます。
声掛けをした後の利用者の表情や行動は介護者として変化を見落とす事がないよう、注意する必要があるでしょう。

 
スピーチロックの特徴としては利用者の行動を制限する、あるいは強制的に行動させるような命令的な口調であるケースが多いです。

 
スピーチロックが命令的な言葉であったり、高圧的な言葉であると言った特徴を持っているのに対し、利用者の行動を制限しないような言葉がけには「利用者の同意」を得るような言葉が多くあります。

 
つまり、利用者を言葉で縛っていたのは「言葉が悪かった」だけであり、「利用者を思った言葉」を使う事で利用者の自由な選択のもと同意出来るような状況を作る事でスピーチロックを廃止する事が出来るのです。

 

 

 

 

身体拘束を廃止するには

身体拘束を廃止するには
身体拘束をしない介護について考え、実践していくには利用者の必要としている事やニーズを読み取る介護技術が必要です。
何故、身体拘束をしなければならないような行動を利用者がしてしまうのか?という事をコミュニケーションの中から読み取っていくのです。

 
身体拘束をしない介護をする上では「集団生活」に目を向けた介護よりも、利用者を一人の個人として扱う「個別ケア」を実践していくのが効果的です。
個別ケアを実践していく上では「ユニットケア」という個別ケアを行うのにより適したケアを選択するのが良いでしょう。

 
「ユニットケア」とは、自宅に近い環境の介護施設で、他の入居者や介護職と一緒に生活をしながら、入居者一人ひとりの個性や生活リズムに応じて暮らしていけるようにサポートする介護手法のことを言います。

 
ユニットケアは、入居者の尊厳ある生活を保障し、一人ひとりの個性と生活リズムを尊重した「個別ケア」を実現する一つの手法なのです。

 
「ユニットケア」の最大の特徴は、入居者個人のプライバシーが守られる「個室」と、他の入居者や介護スタッフと交流するための「居間」(共同生活室)があることです。

 
ユニットケアでは一人一人の個性や生活スタイルに合わせたケアを行う為、もちろん特養などの施設で生活する人の住む環境も整備をします。

  • 今までと変わらない暮らし
  • 自分の居場所を設ける
  • 他の人との交流
  • 施設だけでなく地域の中でも生活できるようにする

 
特別養護老人ホームに入居される人の今までと変わらない暮らしを支えるには、今まで生活する上で使ってきた馴染みの家具というのもあるでしょう。

 
また、生活をしていく上では自分の居場所を持っている事も重要ですよね。

 
生活の上では他の人との交流も欠かせないでしょう。

 
生活をしていく上では地域の中でもいろいろな人や物、サービスと関わってきますよね。

 
特別養護老人ホームなどの施設で生活する人は施設の中だけで生活をしているのではなく入居者が望む限り地域との関わりを最大限サポートするのもユニットケアの特徴です。

 
ユニットケアでは、人が生活する上で当たり前だったことを、介護が必要になったからあきらめるのではなく、当たり前だった生活を介護が必要になったとしても当たり前に送れるようにするという大義を持った介護手法なのです。

 
ユニットケアについては「ユニットケアとは 」で詳しく紹介していますのでチェックしていってください。

 
また、個別ケアを実践していくにあたっては利用者に対して傾聴を大切にするようにしましょう。

 
傾聴をする事によって、利用者が今何を考えているのか?何を思ってそのような行動を引き起こすのか?という情報を引き出す事が出来、身体拘束を行わない介護を実践する糸口が見える事が多いです。

傾聴というのは話し手の人の話を、そのまま受け止めながら聴く事です。
傾聴では、基本的に話し手が話したいことを話したいように、感じたままに自由に話してもらいます。
傾聴を通して話し手が話したい事を話したいように自由に話てもらう事によって相手の本音やニーズを引き出す事が出来ます。

 
介護サービスを利用する利用者は自律的な生活を送る事が出来るという事が理想的です。
生活をしていく上では「食事」をとるかとらないかも利用者の自由な自己決定によって行われます。

 
利用者に対して傾聴を続けていくと、利用者の話を聞いているだけなのに自分の要望を受け止めてもらう事が出来る機会が増えるのです。
「今日はご飯いりません」という利用者に対しても傾聴を続けていくと「あなたが言うならご飯を食べて良いかな」という思いになる事があるのです。

 
このように傾聴に傾聴を重ね、利用者との信頼関係を築く事によって、介護職員として利用者に要望をくみ取ってもらう事が出来るようにもなるのです。

 
傾聴をする前提としては利用者が自分に対して本当の事を語ってくれる事がポイントです。
場合によっては介護職員として働く人に気を使って利用者が自分の本当の気持ちを語ってくれない事もあるでしょう。

 
相手の言った言葉の裏まで聴くには「目は口ほどに物を言う」と言われている目の動きや表情の変化などにも注意して傾聴する事がポイントです。
そして、考え得る原因を考え、質問し、傾聴を繰り返す事で利用者が持つ裏の言葉を引き出していく事が出来るのです。

 
利用者の事を考えたユニットケア・個別ケアをとり入れ、尚且つ介護職員として利用者の行動の原理を傾聴によって解きあかし、対処していく事によって身体拘束を廃止する事が出来るのです。

 

 

 

身体拘束の事例 拘束のない介護を目指すために まとめ

身体拘束の事例 拘束のない介護を目指すために まとめ
身体拘束というのは、施設や病院などで、高齢者を、「治療の妨げになる行動がある」、や「事故の危険性がある」という理由で、ひもや抑制帯、ミトンなどの道具を使用して、ベッドや車椅子に縛ったりすることをいいます。

身体拘束の具体的な事例としては次のような事例があります。

  • ベッドに手を縛る拘束
  • 手指を自由に使えない拘束
  • ベッドに腹部を固定する拘束
  • ベッドから下りられないようにする拘束
  • 車椅子から立てないようにする拘束
  • 部屋から出られないようにする拘束

ベッドに手を縛る拘束は主に病院や療養型の介護施設でベッドに手を縛る身体拘束が行われる場合があります。
また、身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者など自分が治療を受けている事が認識できない人や治療中の器具を抜いてしまうような人が多いです。

 
ベッドに拘束具で身体を固定しないと、体のチューブを抜いて健康リスク、命の危険があると判断される場合に身体拘束が行われるケースが多いでしょう。

手指を自由に使えない拘束は病院や療養型の介護施設以外でも、在宅・特別養護老人ホームなどでも行われる可能性のある身体拘束です。
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者や精神的な病気を持っていて体をかきむしってしまったり、オムツを外してしまうような人が多いです。

 
主に身体拘束にはミトンと呼ばれる拘束具を用いられます。

 
ミトンは手や腕は自由に動かす事が出来ますが、手指を自由に使えないとなると物を十分につかむことが出来ないなど、生活上の不便さを伴う拘束となります。

 
ベッドに腹部を固定する拘束は主に病院や療養型の介護施設で行われる場合があります。
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者で徘徊をしてしまう人や、足の治療を受けている人、ピック病などが原因で他の人の命の危険などが迫ってしまう場合など歩けない身体状態だけれども歩いてしまったり、社会的な規範を認識する能力がいちじるしく低下した人が多いです。

 
ベッドに腹部を固定する拘束は胴抑制と呼ばれ、胴抑制帯と呼ばれる拘束具を用いて身体拘束が行われます。

 
ベッドから下りられないようにする身体拘束は主に病院や療養型の介護施設の他、在宅の介護や施設型介護でも行われる場合があります。

 
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者で徘徊をしてしまう人が多く、とりわけ身体機能が低下している人が多いです。
ベッドから降りられないようにする拘束は、ベッドに4点柵と呼ばれる柵を用いて行われます。

 
4点柵は健康な体を持つ人であれば容易に乗り越える事が出来ますが、高齢者等、老化の影響で身体機能が低下している人には乗り越える事は困難であり、ベッドに拘束された状態と同じです。

 
車椅子から立てないようにする身体拘束は主に病院や施設介護など幅広く用いられる場合があります。

身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者で足(下肢)の筋力が低下していたり、骨折などの何かしら歩行移動にリスクを抱える人が多いです。
車椅子から立てないようにする拘束は、車椅子にY字抑制帯と呼ばれる車椅子と体を固定する為の帯が使用されます。

 
認知症の人は自分の身体状況を正常に判断する事が出来ず「歩ける」と思ってしまい、立ち上がって歩こうとするのです。
主に車椅子から立てないようにする拘束には「転倒予防」を望んで行われる事が多いです。

 
部屋から出られないようにする身体拘束は主に病院や施設介護など幅広く用いられる場合があります。

 
身体拘束の対象となるのは認知症の高齢者でピック病などの症状が強く出る人や、感染リスクの高い疾病を持っている人が多いです。
部屋から出られないようにする拘束は利用者・患者には開ける事が出来ないカギを部屋に付け、そこで生活させる事によって行われます。

 
身体拘束は拘束された本人の自由を奪う行いです。

 
身体拘束は命の危険のある、やむおえない場合の一時的な対処として用いられるべきですが、介護の現場では、「介護職の仕事の都合」を優先させた結果として身体拘束を行う事態が起きてきました。

 
利用者を人として扱う事が出来なくなった介護職は、利用者の人権を考える事が難しくなり、結果として虐待すらも「必要悪」として認識するような思考となるケースもあるのです。

 
身体拘束は、人の生活の中では命を救うための最終手段として用いるべきであり、利用者を物として扱うような身体拘束は決して行うべきではないでしょう。

 
身体拘束は全体的に認知症の人に対して行われる事が多いです。

 
認知症によって起こる行動に対処する為に身体拘束を行っているのであれば、認知症についてより深い理解を持ち、適切な対処をする事によって身体拘束廃止を目指したいものですね。

 
身体拘束が行われる事が日常的になってくると、介護職員が利用者を大切に思う気持ちや意識も低下してきます。
また、介護現場と日常生活の間に更に大きなギャップを生むこととなり、仕事に対する熱意ややる気も低下してきます。

 
身体拘束は利用者の安らかな日常を奪い行為である反面、介護職の健康的で安らかな日常を奪う行為でもあるのです。

 
また、仕事と日常生活の間でギャップが大きければ大きいほど、仕事に行くときの「仕事に行きたくない」という気持ちも大きくなりがちになり、最悪の場合、うつになってしまう人も居ます。

 
身体拘束以外の拘束としてはスピーチロックという物もあります。
スピーチロックとは身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
身体拘束をしない介護について考え、実践していくには利用者の必要としている事やニーズを読み取る介護技術が必要です。
何故、身体拘束をしなければならないような行動を利用者がしてしまうのか?という事をコミュニケーションの中から読み取っていくのです。

 
身体拘束をしない介護をする上では「集団生活」に目を向けた介護よりも、利用者を一人の個人として扱う「個別ケア」を実践していくのが効果的です。
個別ケアを実践していく上では「ユニットケア」という個別ケアを行うのにより適したケアを選択するのが良いでしょう。

 
また、個別ケアを実践していくにあたっては利用者に対して傾聴を大切にするようにしましょう。

 
傾聴をする事によって、利用者が今何を考えているのか?何を思ってそのような行動を引き起こすのか?という情報を引き出す事が出来、身体拘束を行わない介護を実践する糸口が見える事が多いです。

 
利用者の事を考えたユニットケア・個別ケアをとり入れ、尚且つ介護職員として利用者の行動の原理を傾聴によって解きあかし、対処していく事によって身体拘束を廃止する事が出来るのです。

 

 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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