介護の精神と社会

介護という人々を支える仕事について精神面や法制度などを交え 解説しています。

介護のスピーチロック 利用者も介護職も拘束される介護

      2015/11/07


介護の現場では身体拘束のみならず、言葉による拘束も現在では問題視されるようになってきました。

 
人材・財政不足の介護の現場ではよく「ちょっと待って」という言葉を利用者に、利用者の方にいう場面をよく目にします。

 
財政が不足し、人材が不足している介護の現場は忙しいという事で世間では認識されいますが、忙しさのあまりスピーチロックに頼った介護を続ける事は自他ともに疲弊しきるような介護となってしまいます。

 
「ちょっと待って」等のスピーチロックを使う事によってスピーチロックを受けた相手の利用者も、介護をしている介護職自身も拘束される事になり、精神的な負担をお互いに受け続ける事になります。

 
スピーチロックに頼った介護は利用者の方の生活のうるおいを奪うだけではなく、結果として介護士を含む介護職の生活の潤いを奪う事にもつながります。

 
ではスピーチロックとはなんなのでしょうか?
また、スピーチロックによって利用者や介護をしている介護職自身も拘束を受ける事になるとはどのような事なのでしょうか?

 
スピーチロックを使う事によって起こる弊害をまとめましたのでチェックしていってください。

 

 
介護のスピーチロック 利用者も介護職も拘束される介護
 

 

スピーチロックとは

スピーチロックとは
スピーチロックとは身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
具体的な例としては次のような言葉があげられます。

  • 動いたらダメ
  • 早く食事して
  • 立ち上がらないで
  • どうしてそんなことをするの

 
利用者の行動に対して、叱るような言動もスピーチロックの対象になります。
スピーチロックについては、現在どのような言葉が拘束として該当するか、はっきりとした判断基準はありません。

 
しかし、一般的に人として相手の尊厳を傷つける言葉や人権侵害に当たるような言葉はスピーチロックに該当するとの見解があります。

 
また、今まで生活してきた中で受けた心の傷や人間関係の中から、ふとした言葉で行動的な自由を奪われてしまうような利用者が居ます。
声掛けをした後の利用者の表情や行動は介護者として変化を見落とす事がないよう、注意する必要があるでしょう。

 
スピーチロックの特徴としては利用者の行動を制限する、あるいは強制的に行動させるような命令的な口調であるケースが多いです。

 
スピーチロックが命令的な言葉であったり、高圧的な言葉であると言った特徴を持っているのに対し、利用者の行動を制限しないような言葉がけには「利用者の同意」を得るような言葉が多くあります。

 
つまり、利用者を言葉で縛っていたのは「言葉が悪かった」だけであり、「利用者を思った言葉」を使う事で利用者の自由な選択のもと同意出来るような状況を作る事でスピーチロックを廃止する事が出来るのです。

スピーチロックについては「スピーチロックとは」で詳しく解説しているのでチェックしていってください。

 

 

 

 

スピーチロックは相手も自分も拘束する

スピーチロックは相手も自分も拘束する
スピーチロックにはスピーチロックを受けた利用者も、スピーチロックをした拘束者である介護職も拘束をしてしまいます。
スピーチロックには「直接的な拘束」と「間接的な拘束」があるのです。

直接的な拘束とは言葉そのものによって起こされる拘束です。
これは拘束者である介護者が利用者に対してスピーチロックを行う事によって起こされる拘束です。

 
介護施設で利用者の方が、廊下で介護職に用事を頼もうと声を掛ける場面はよくあることです。
その時、忙しそうに働いている介護職は、利用者の方に声をかけられると「ちょっと待ってください」と言って通り過ぎる事があります。

 
利用者の方は廊下で何人もの介護職に繰り返し、何度も声をかけています。

 
しかし、何度声をかけても誰に声をかけても「ちょっと待ってください」の言葉しか返ってきません。
このような状況になれば利用者の方は次第に「諦め」てしまいますよね。

 
このように言葉によって利用者の自由な行動を直接的によって拘束する事が「直接的な拘束」です。

 

 
直接的な拘束に対し、「間接的な拘束」があります。
これはスピーチロックによって起こされるさまざまな弊害が原因となり、結果として介護職が拘束されたような状態となる事を指します。

 
スピーチロックを継続的に受けた利用者は「したいことが出来ない」場所に居ると感じ虚しさや苛立ちを感じるようになります。

 
スピーチロックを継続的に受けた利用者は精神的な負担をかかえる事になり、生きる意欲をなくしたり、自信を喪失したり、最悪の場合「うつ」や「廃用症候群」になってしまう事があります。

 
また、頼んでも何もしてくれない介護職に対して、逆に「何もしてほしくない」という思いを持つこともあり、食事拒否や入浴拒否等の介護の拒否に繋がる事もあります。

 
介護職として働く上では利用者の疾病が重くなったり、拒否があったりすると「介助しなければならないが介助できない」状況を生む事になったり、より介護が重くなる事となります。

 
スピーチロックによる弊害によって一人の利用者にかかる介助の時間が増加し、結果的にその利用者の状況に拘束される事となるのです。
これがスピーチロックでいう「間接的な拘束」となるのです。

 
スピーチロックの間接的な拘束は介護職の行った行動によって引き起こされているため、因果応報とでも言うべき状況となってしまうのです。

 

 

 

 

スピーチロックが介護の負担を大きくする

スピーチロックが介護の負担を大きくする
スピーチロックは介護の負担を大きくします。
理由は先ほども紹介したスピーチロックのもつ「間接的な拘束」にあります。

 
スピーチロックを継続的に受け続けた利用者は、色々な事に対して「諦める」という事が習慣的になってきます。

 
言い方は悪いかもしれませんが利用者が「諦める」事は一見「介護職の仕事が減った」かのように見えるかもしれません。
しかし、諦めが習慣化する事によって、利用者の人はできる事すらも諦めるような習慣がつくようになる事が多いです。

習慣的に諦める事が続く事によって出来る事をやらなくなり、また出来たとしても今まで通りの充実感や満足感がなくなってくるのです。

利用者の出来る事が出来なくなってきた事によって介護職は利用者が出来なくなったことを介助する必要が出てきます。
また、利用者が不安定な精神状況に陥ると、不穏になる事もあるでしょう。

不穏になると、不穏な状況は他の利用者にもつながる事になり、更に介護職の仕事の負担が増えてくるのです。

 
スピーチロックは行った直後は仕事が一つ減ったように見えるかもしれませんが、利用者の出来る事が出来なくなってしまう悪循環を生み、更には他の利用者にも精神的な不安定さが伝染するという恐ろしさがあるのです。

 

スピーチロックを行わない介護が、今の利用者の状態を維持する事に繋がり、また介護の負担を大きくしない方法なのです。

 

 

 

 

スピーチロック廃止 傾聴がポイント

スピーチロック廃止 傾聴がポイント
スピーチロックを行わない介護が理想的であるとはいえ、現場が忙しすぎてスピーチロックに頼らざるを得ないと思っている人も居る事でしょう。
しかし、スピーチロックを詳しく見てみるとスピーチロックによって介護の負担がますます増えている事がわかります。

つまり、スピーチロックを廃止する事がむしろ介護の仕事を忙しくさせない手段なのです。

スピーチロックを廃止する事が難しいと感じている人は、まずは傾聴をするようにしてください。
そして、傾聴の後、待ってもらえるよう同意を得る事です。

傾聴というのは話し手の人の話を、そのまま受け止めながら聴く事です。
傾聴では、基本的に話し手が話したいことを話したいように、感じたままに自由に話してもらいます。
傾聴を通して話し手が話したい事を話したいように自由に話てもらう事によって相手の本音やニーズを引き出す事が出来ます。

 
介護サービスを利用する利用者は自律的な生活を送る事が出来るという事が理想的です。
生活をしていく上では「食事」をとるかとらないかも利用者の自由な自己決定によって行われます。

 
利用者に対して傾聴を続けていくと、利用者の話を聞いているだけなのに自分の要望を受け止めてもらう事が出来る機会が増えるのです。
「今日はご飯いりません」という利用者に対しても傾聴を続けていくと「あなたが言うならご飯を食べて良いかな」という思いになる事があるのです。

 
このように傾聴に傾聴を重ね、利用者との信頼関係を築く事によって、介護職員として利用者に要望をくみ取ってもらう事が出来るようにもなるのです。

 
傾聴をする前提としては利用者が自分に対して本当の事を語ってくれる事がポイントです。
場合によっては介護職員として働く人に気を使って利用者が自分の本当の気持ちを語ってくれない事もあるでしょう。

 
相手の言った言葉の裏まで聴くには「目は口ほどに物を言う」と言われている目の動きや表情の変化などにも注意して傾聴する事がポイントです。
そして、考え得る原因を考え、質問し、傾聴を繰り返す事で利用者が持つ裏の言葉を引き出していく事が出来るのです。

 
傾聴については「傾聴力は介護力 介護職員の最強の武器」でも詳しく解説しているのでチェックしていってください。

 
緊急事態を除いて、ちょっと待ってほしい状況であっても1分でも利用者の話を聞く事は出来ますよね。

 
利用者は介護職に話を聞いてもらえたという思いだけでも気持ちが少し落ち着くものなのです。
そして、落ち着いたところで「今他の人を手伝っている途中なので後でまた話を聞かせてもらえますか?」とお願いしてみましょう。

わがままな利用者は最初は「嫌だ!」というかもしれませんが、信頼関係が少しずつ築かれていくと快く承諾してもらえるようになる事も多いです。
ここでもポイントは利用者の聞いてもらえたという満足を引き出す事です。

利用者の行動や思想を制限することなく、自由な意思決定の上で「待つ」という事を選択してもらえたのであれば言葉による拘束ではなく、言葉による自由な選択肢の提供という結果をうむのです。

 
傾聴は様々な場面で使える介護職最強の武器ともいえる手法です。
スピーチロック廃止に向けて傾聴を大事にしてみてください。

 

 

 

 

介護のスピーチロック 利用者も介護職も拘束される介護 まとめ

介護のスピーチロック 利用者も介護職も拘束される介護 まとめ
スピーチロックとは身体拘束とは異なり「言葉による拘束」(speech lock)のことです。

 
言葉によって利用者の行動を抑制し、制限したりする介護者の「言葉による対応」を指します。

 
スピーチロックにはスピーチロックを受けた利用者も、スピーチロックをした拘束者である介護職も拘束をしてしまいます。
スピーチロックには「直接的な拘束」と「間接的な拘束」があるのです。

 
直接的な拘束とは言葉そのものによって起こされる拘束です。
これは拘束者である介護者が利用者に対してスピーチロックを行う事によって起こされる拘束です。

 
直接的な拘束に対し、「間接的な拘束」があります。
これはスピーチロックによって起こされるさまざまな弊害が原因となり、結果として介護職が拘束されたような状態となる事を指します。

 
スピーチロックによる弊害によって一人の利用者にかかる介助の時間が増加し、結果的にその利用者の状況に拘束される事となるのです。
これがスピーチロックでいう「間接的な拘束」となるのです。

 
スピーチロックは介護の負担を大きくします。
理由は先ほども紹介したスピーチロックのもつ「間接的な拘束」にあります。

 
スピーチロックは行った直後は仕事が一つ減ったように見えるかもしれませんが、利用者の出来る事が出来なくなってしまう悪循環を生み、更には他の利用者にも精神的な不安定さが伝染するという恐ろしさがあるのです。

 

スピーチロックを行わない介護が、今の利用者の状態を維持する事に繋がり、また介護の負担を大きくしない方法なのです。

 
スピーチロックを行わない介護が理想的であるとはいえ、現場が忙しすぎてスピーチロックに頼らざるを得ないと思っている人も居る事でしょう。
しかし、スピーチロックを詳しく見てみるとスピーチロックによって介護の負担がますます増えている事がわかります。

 
つまり、スピーチロックを廃止する事がむしろ介護の仕事を忙しくさせない手段なのです。

 
スピーチロックを廃止する事が難しいと感じている人は、まずは傾聴をするようにしてください。
そして、傾聴の後、待ってもらえるよう同意を得る事です。

 
傾聴というのは話し手の人の話を、そのまま受け止めながら聴く事です。
傾聴では、基本的に話し手が話したいことを話したいように、感じたままに自由に話してもらいます。

 
緊急事態を除いて、ちょっと待ってほしい状況であっても1分でも利用者の話を聞く事は出来ますよね。

 
利用者は介護職に話を聞いてもらえたという思いだけでも気持ちが少し落ち着くものなのです。
そして、落ち着いたところで「今他の人を手伝っている途中なので後でまた話を聞かせてもらえますか?」とお願いしてみましょう。

 
利用者の行動や思想を制限することなく、自由な意思決定の上で「待つ」という事を選択してもらえたのであれば言葉による拘束ではなく、言葉による自由な選択肢の提供という結果をうむのです。

 
傾聴は様々な場面で使える介護職最強の武器ともいえる手法です。
スピーチロック廃止に向けて傾聴を大事にしてみてください。

 

 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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