介護の精神と社会

介護という人々を支える仕事について精神面や法制度などを交え 解説しています。

介護の基本 介護職員は利用者が人として持つ権利について意識しよう

      2015/11/07


介護の基本として、介護者である介護職員は利用者が人として持つ権利について意識する事もとても重要です。
介護職員という仕事を長く続けている人は、介護技術にも優れ、介護現場で起きるさまざまな事も見てきています。

しかし、長く入ればいれるほど、慣れからつい介護職員が利用者の権利を無視した言動や行動をとりがちです。

利用者に対して悪いことをしようとしているわけではなく、利用者がよりよい生活を送ってもらいたい、より健康的な生活を送ってもらいたい、理想の最後を遂げてもらいたいと思うあまり、利用者の権利を無視したような行動が出てきてしまう事があるのです。

ベテラン介護職員は確かに利用者にとっても頼もしい存在ではありますが、「誰のための介護」であって「何のための介護」かを意識する必要があるでしょう。

慣れからくる利用者の権利を軽視したような行動を防ぐには介護職員は利用者が人として持つ権利について意識し続ける事が重要です。

 

 
介護の基本 介護職員は利用者が人として持つ権利について意識しよう
 

 

介護職は専門職としての人権の意識を持つことが重要

介護職は専門職としての人権の意識を持つことが重要
介護職員として働く上では利用者の一人ひとりに対して、利用者は一人の立派な人間であることを認識する事は重要です。
また、介護職員は悲しいかな、介護職員として働く上では家族のような存在であっても、家族ではありません。

 
介護職員は利用者からしてみればお世話してくれる一人の他人であり、介護職員が利用者の事をどう思っていたとしても、利用者の思いは利用者の思いです。
中にはお世話してくれる人だからと、利用者本人が介護者である介護職員に合わせてくれているケースもあります。

 
家族だからこそ存在する人間、他人だからこそ存在する人間関係の中には、お互いに相手に対する人としての権利の意識は重要になってきます。

 
利用者は一人の成熟した人であると同時に、介護者である介護職員も成熟した一人の人間です。
どちらかが一方的に我慢するだけの生活は人間関係上では不公平な関係とも言えます。

 
とりわけ、仕事として利用者を支える介護職員は、利用者が我慢し続けるような生活を専門的な目線で防ぐ事が重要です。

 
人権というと正しい知識、理解がない事には、個人の思いや価値観が乗ってきてしまいますので、原点に立ち返り、人権という言葉をつかさどっている憲法について内容を振り返ってみましょう。

 

 

 

 

人権を正しく理解して混乱のない介護をしよう 日本国憲法第13条(個人の尊重)

人権を正しく理解して混乱のない介護をしよう 日本国憲法第13条(個人の尊重)
介護職員という専門的な職業で仕事をする上では、利用者の権利を意識したケアに日々当たっていく事が重要です。
利用者の権利というのは、要するに人権を意識した行動をする事が一番のポイントとなるでしょう。

人権という言葉は、正しい知識と理解がないと、それぞれ個々の価値観で内容を判断されてしまうので、人権をうたった法律を見る事で正しい知識、理解をしていきましょう。

 
人権をうたった法律としては日本国憲法の第13条の個人の尊重を見てみる事にします。
介護職員という、利用者を介護で支える専門的な職業をしていく上では、一度は目を通しておいた方がよいでしょう。

 
日本国憲法第13条には人権について次のような文章が記載されています。

 

「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

 
日本国憲法第13条では人権について「個人の尊重」として表現されています。
個人の尊重というのは簡単に言えば、一人の人間として認められ、虐げられる存在ではないということです。

 
昨今の日本では高齢者や障害者、一人で生きていく力のない子供に対しての虐待行為が後を絶ちません。
虐待行為というのは虐待の対象となった人を一人の人間として認めていない、虐げるような行いです。

 
また、日本国憲法第13条には「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利には公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」とあります。

 
わかり易く要約すると、社会生活を送る上で逸脱した行為や思いを持たなければ、法律や他の国の状況も考えた上で生きていく事、自由、幸せになろうとする事を最大限行っていっていいですよという事です。

 
幸せになるために人を殺そうとしたり、物を奪ったりする行為は公共の福祉や社会生活を送る上では逸脱した行為と言えますが、勉強をしたりサークル活動をしたりと社会生活を送る上で現代で一般的と思われている内容では命も自由も幸せも掴み取っていってくださいと言われているような内容です。

介護サービスを利用する利用者、介護者として利用者を支援する介護職員であっても、この権利はすべての人に働きます。

このページを読んでいる人も日本国憲法第13条でうたわれている事は適用されます。

 
利用者の権利を意識する上では、利用者も一人の人間として認められていて、虐げられるような存在ではない。
社会生活を送る上で逸脱した行為や思いを持たない限りは、法律や他の国の状況も考えた上で生きていく事や自由、幸せになろうとする事は最大限行っていいんだという事を、介護職員は覚えておく必要があります

 

 

 

 

誰にだって人権がある 人として生きていくという事

誰にだって人権がある 人として生きていくという事
介護は人と人とのやり取りの中で介護者、要介護者という関係の上、お互いの生活を作り上げていく行為です。

 
しかし、介護の関係のなかで「介護者は力が強い」「要介護者は力が弱い」という力関係を無意識のうちに作り上げてしまい、結果として要介護者の人権を考えない行動となってしまう場面があります。

 
福祉という考えはそもそも「力が強い物が、力が弱いものを守る」という根本的な関係により成り立っています。
つまり、「介護者は力が強い」「要介護者は力が弱い」という考えに陥ることそのものが自然な流れとなってしまう点が、福祉の矛盾点なのです。

しかし、介護が必要な要介護者であっても、人間として生まれ、生きている以上、他の人と違った特別な存在ではなく、当たり前のように自由に物事を考え、行動を起こし、幸せになろうとして良いのです。
しかし、事故や老化、生まれつきなど様々な背景の上で、要介護者は介護者の介護を必要とする状況となり、他の人からの支援を必要とする状況にあります。

 

  • 交通事故により足を失った人も中にはいるでしょう。
  • ビルが火事にになって誰かをかばって下半身不随になった人もいます。
  • 過去の戦争によって手足を失った人も居るかもしれません。
  • 老化によって介助が必要となった近所の人も居ますよね
  • 自分がお腹の中に居る時に、親がドラッグを使っていて奇形児として生まれてきた人もいます

 
このように人それぞれ色々な事が背景にあり、介護者の介護を必要としている人が居るのです。
誰だって自分が生きてきた中で自分だけの人生があり、ストーリーがあります。

 
介護サービスを利用する利用者であっても、一人の人間として認められ、人権が守られる存在である事には変わりがなく、人権が守られた人生では誰しもが自分の人生では主人公なのです。

 

 

 

 

介護職が見るベストな方法と、利用者の自由の狭間 双方の矛盾

介護職が見るベストな方法と、利用者の自由の狭間 双方の矛盾
利用者を支える介護職員として長く働いていると、利用者に対して健康的でいられる方法という物が経験として蓄積されてきます。
介護を長く続けてきた人だから蓄積される経験によって、介護職員として利用者を考えたときにベストな方法というのが見えてくるのです。

 
一方、利用者には様々な人がいます。
生まれたときから介護を必要としている人、交通事故によって中途障害者となってい舞った人、高齢者になりやむおえず介護サービスを利用する必要が出来た人など、人によって要因は千差万別です。

 
利用者は一人の人間です、日常生活のリズム、生活の中で成し遂げたい事、やりたい事、欲しいもの、好きな物から嫌いなもの等、さまざまな価値観を持っています。

 
介護職が思う利用者を支える上でベストな方法と、利用者が思う好きな事、嫌いなことなどの価値観がマッチすれば良いのですが、なかなかそうはいきません。

 
介護職員という専門的な職業で働き、利用者の人権を意識した行動を行うにはどのような事に気を付けていけばよいのでしょうか?
介護職員として利用者を支援していく上では、あくまで介護職員は「支援者である」という立場を理解する必要があります。

 
支援者は一緒に考えたり、自分の知っている知識の中からアドバイスを行ったり、困った時は手伝いをするような特徴があります。
最終的な決定、判断は介護サービスを利用する利用者です。

 
認知症などにより、自分で判断する事が難しい場合は、支援者として決定する必要がある事もありますが、あくまで支援者であるという立場をとりましょう。

 
ここで一つ、事例を見てみましょう。

 

 

 

介護職が見るベストな方法と、利用者の自由の狭間 肺に機能障害を持つ高齢男性の事例

介護職が見るベストな方法と、利用者の自由の狭間 肺に機能障害を持つ高齢男性の事例
介護職員が見るベストな方法と、利用者の自由の狭間を話す上では事例を見るのが一番具体的なイメージがわくでしょう。
「利用者の権利」について考得る上では事例が一番手っ取り早いのです。

 
事例を見る事により、介護職員と利用者が持つ思いの摩擦が見え、さまざまな場面で考察していくことが出来ます。
では実際に介護職が見るベストな方法と利用者の自由の狭間を見ていきましょう。

 

 
この事例で紹介するのは70代の高齢男性、20年もの経歴を持つベテランの介護士、1年のキャリアもない新米介護士です。

 

70代の高齢男性は愛煙家であり、ちょっとした時間にタバコを楽しむ習慣がありました。
しかし、体調を崩し、病院で受けた診察の結果「肺の機能障害:COPD」である事がわかりました。

 
ベテラン介護士はその病気の辛さ、恐ろしさを今までの介護経験上わかっていました。
ベテラン介護士はCOPD(肺の機能障害)にタバコは悪影響である事を理解していたため、その日を境に70代高齢者の男性がタバコを吸っている事を見つけると注意するようになりました。

 
70代高齢男性は「俺の勝手だろ!タバコを吸って死のうが俺の自由だ!」と言います。
見かねたベテラン介護士は、70代高齢男性からタバコを取り上げるようになりました。

 
70代高齢男性はタバコを取り上げられたショックにより精神的に不安定な状態になってしまいました。

 
ある新米介護士が、70代高齢男性が落ち込んでいるのを見かねて事情を聴いたところ「妻もタバコも失った、俺には生きがいなんて何もないんだ・・・」という思いを聞きました。

 
新米介護士はたまらず、70代高齢男性を連れて秘密の喫煙所へ行き、タバコを差し出しました。
70代男性は涙を流しながら「おいしい・・・おいしいよ・・・ありがとう」と言ったのです。

 
肺に悪影響のある所にタバコをすったのだからCOPDは進行します。
70代高齢者は酸素ボンベが無いと行動するのも困難になりました。

 
新米介護士は「彼に取り返しのつかない大変な事をしてしまった。謝っても謝りきれない」という思いを抱えるようになりました。
ベテラン介護士は新米介護士の事を滅茶苦茶に怒り倒していました。介護経験の豊富なベテラン介護士としては当然の思いでしょう。

 
新米介護士は意を決して、70代高齢男性にお詫びを入れに彼の部屋を訪問した。
お詫びを入れた70代男性の口から出た言葉は「最後に俺の願いを叶えてくれてありがとう。生きててよかったよ。世の中は捨てたもんじゃないなぁ」と言ったのです。

 
ほどなくして、70男性は亡くなりました。
遺品を整理していると70代男性の部屋の思い出の宝箱の中からは新米介護士が渡したタバコの箱とライターが見つかり、70代の男性が認知症予防の為、書いていた日記には「最後の最後に救ってくれた彼に感謝する。また一緒にタバコが吸いたいものだ。」と書かれていました


 

COPDなどの肺の障害を抱えた場合タバコを喫煙すること自体は、体の事を考えると避けるべきです。
しかし、この利用者の権利という面から考えた場合は何がベストだったのでしょうか?

 
人は自分が望む生活が出来ないなら生きてはいたくないのかもしれません。
医学的な見地、介護的な見地でそれをするべきではないとわかっていたとしても、利用者の権利は利用者の権利です。

 
もし利用者が「死んでもいいから喫煙したい・・・」と思い、喫煙する事を生きがいと感じていたらどうでしょうか?
この場合「喫煙」という行為そのものが「70代高齢男性の権利」といえます。

 
その権利を介護職はおろか、他の人には家族であっても奪う事はできません。

 
「健康」になるため「生きがい」を失うという悲しい結果にもなりかねません。

 
あくまで介護職は支援者として「情報の提供者」であり、最終的に自立した決定を行うのは利用者なのです。

 

 

 

介護の基本 介護職員は利用者が人として持つ権利について意識しよう まとめ

介護の基本 介護職員は利用者が人として持つ権利について意識しよう まとめ
介護職員として働いていく上では、介護サービス利用者の人権を意識したケアに努める事が必要です。
人権という言葉の意味を正しく理解していないと、個人個人が思い描く人権が出来上がってしまいます。

 
人権という言葉を正しく理解する上では日本国憲法第13条の個人の尊重を理解する事が根本的な考えを理解する助けとなります。

 
日本国憲法第13条では、利用者も一人の人間として認められていて、虐げられるような存在ではない。
社会生活を送る上で逸脱した行為や思いを持たない限りは、法律や他の国の状況も考えた上で生きていく事や自由、幸せになろうとする事は最大限行っていいんだという事を読み取る事が出来ます。

 
しかし、長く介護職員を続けていくと介護という専門的な見地、利用者の思いの摩擦が生まれる事もしばしばあります。
いくら利用者の体の事を考えていたとしても利用者の思いを汲んだ介護をしなければ何のための、誰のための介護かという壁に衝突する事になります。

 
利用者の体の事を想えば望ましくない行動であっても、利用者の思いの強さによっては、介護者である介護職員は思慮していく必要があります。
あくまで介護者は支援者であり、最終的な決定・判断は利用者本人の権利として委ねられている事を介護職員は理解しておきましょう。

 

 

 

 
最後までお読みいただきありがとうございました。

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